2013年7月31日水曜日

未上場企業の株式買い戻しにおける4つのポイント


未上場の企業において、資金上や、ビジネス上の必要性から、経営陣や、外部(VC、取引先)に株式をもっていただくことはよくあります。
また、会社が成長・成熟するプロセスにおいて、それらの株主との関係を軌道修正し、株式の買い戻しを行うニーズが出てくることも、ごくごく一般的であります。
未上場企業における少数株主のエグジット方法としては、①会社の買戻し、②経営者の買戻し、③第三者の買戻し、の3パターンしかないかと思いますが、いずれにおいても、(スキームによってテンションは違いますが)、以下の4つのポイントを意識する必要があると思います。

1 買取り株価は合理性があるか

未上場企業株式の買い取り価格については、基本的には「売り手と買い手の交渉に基づく合意事項」ではあるものの、一つ一つの取引価格の設定について、(当然といえば当然ですが)きちんと設定根拠があることが必要になります。
望ましくは、株価の設定について何らかのストーリーになっていて、「●年はこういう状況だったので一株あたり●円で、●年になるとこういうイベントがあって、段階的に一株あたり●→●円と上がっていった」など、後々に簡単に説明できる状態がベストです。
実務で困ってしまうのは、交渉ごとであるがゆえに、「感情」が介入してしまい、合理性から外れたような価格設定を行ってしまうケースです。
こうなると、他の株主に対してや、上場審査の時に説明に窮してしまうことも多く、また、税務上も余計な心配をする必要がでてくることになります。

2 配当可能財源はあるか

会社法上、自己株式取得の際には配当可能限度額の範囲内で行う必要があります。配当可能限度額とは、ざっくりといえば決算書上の利益剰余金ですが、資産の内容によって多少の調整を行います。(営業権や自己株式、繰延資産など、換金性の乏しい資産について減額していくイメージです)
スキーム①「会社の買戻し」においては自己株式の取得として、財源規制はきちんと意識されているものの、スキーム②「経営者の買戻し」や③「第三者の買戻し」においても、同じく財源規制を受けるケースがあります。それは、「買い取りのための資金を会社が拠出しているケース」です。
つまり、会社が、会社の代表者やグループ会社に資金を貸付けて買い戻しを行うケースなどにおいては、直接的には自己株式取得にはならないものの、間接的な取得として、同様に財源規制を受けることになります。一部には、「配当可能利益が無いため、資金を代表者に貸付けて株式を買い戻す」というスキームが安易に行われているようですが、会社法違反となる可能性もありますので、十分に注意が必要です。

3 他の株主の売却請求権(TagAlong条項)はあるか

特定の株主(A社)が自己株式取得というスキームで会社に株式を譲渡するケースでは、会社法上、他の株主にも同様に売却請求権が認められます。
具体的には、株主A社からの自己株式取得の取得の株主総会において、A社以外の他の株主も、「自分も売却候補として議案を修正してくれ」というような要請が出来ることになっているのです。
これによって、A社の一般株主にも換金が困難な株式の売却の機会が得られ、また、経営陣がグリーンメイラー的な株主(敵対的な株主)から不当に高く株式を買い取ることを防止する効果があると言われています。
従って、特定株主からの自己株式買取価格が非常に高いケースや、既存株主とのコミュニケーションが十分ではないケースなどにおいては、この売却請求権を公使されるリスクがあることを十分に念頭に置く必要があります。
なお、この売却請求権は、なにも自己株式買取のケースだけでなく、例えば、ベンチャーキャピタル(VC)の投資契約において、経営陣や特定の大口株主が外部に売却するケースにおいて規定されることも考えられますので、念のための注意が必要です。

4 税務上の不利な取り扱いにならないか

ここが意外と見落としているケースが多いようですが、スキーム①「会社の買戻し」においては、税務上、「みなし配当」が認識される可能性があります。
みなし配当とは、本来の株式配当とは形式上は異なりますが、配当と類似する行為のため、「税務処理上は、配当として認識しよう」というもので、結果的には法人株主には有利な取り扱いとなるケースが多いですが、個人株主には逆に不利な取り扱いになるケースが多いという、「少々ややこしい話」なのです。
例えば、少数出資していた会社の1株あたりの資本が5万円(=株主の取得価格と仮定)の会社の株式を15万円で買い戻した場合、
  [法人株主] 10万円の配当 → 受取配当金の益金不算入として半分は課税無し → 10万円×0.5×40%(税率)=税額2万円
  [個人株主] 10万円の配当 → 給与等と合算して総合課税 → 10万円×(1-10%)一部配当控除×50%(最高税率と仮定)=税額4.5万円
となって、法人株主は有利だけど、個人株主には不利となることが多いのです。
これに対して、スキーム②「経営者の買戻し」、③「第三者の買戻し」の場合は、
  [法人株主] 10万円の株式譲渡益 → 10万円×40%(税率)=税額4万円
  [個人株主] 10万円の株式譲渡益 → 10万円×20%(税率)=税額2万円
となって、有利不利の扱いが、①「会社の買戻し」とは全く逆転してしまうケースも多いのです。
従って、株式の買戻し交渉を誠実に進めるためには、上記のような「株主サイドの」税務上の損得計算も行った上で、検討されることをお薦めします。